【インタビュー】日産イヴァン・エスピノーサ社長「会社を残すには7工場閉鎖をやるしかない」

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Ivan Espinosa(イヴァン・エスピノーサ)/1978年生まれ、メキシコ出身。2003年メキシコ日産入社後、一貫して商品企画畑。2016年日産自動車プログラムダイレクター、2018年常務執行役員、2019年専務執行役員、2024年チーフ・プランニング・オフィサーを経て、2025年4月、社長兼CEOに就任。愛車は左ハンドル仕様の「フェアレディZ」(撮影:今井康一)
6708億円の巨額赤字に転落し、ホンダとの経営統合も白紙となった日産自動車。
崖っぷちの状況で、4月に社長兼CEOに就任したイヴァン・エスピノーサ氏は、新たな経営再建計画「Re:Nissan」を策定。国内を含む7工場の閉鎖や2万人の従業員削減、部品種類の7割削減など、日産再建へ向けて大ナタを振るう。
メキシコ出身のエスピノーサ社長は現在46歳。四半世紀前、「日産リバイバルプラン」を策定し、瀕死の日産を回復に導いた当時のカルロス・ゴーン氏の社長就任と同じ年齢だ。若きトップのもと、日産は再び復活を果たせるのか。エスピノーサ社長を直撃した。

800万台拡大計画が発端

――2024年度の決算は6708億円の最終赤字となりました。日産はなぜこれだけの苦境に陥ったと認識していますか。

この問題というのは、何も1~2年前に始まったことではない。そもそもの発端は10年ほど前だ。当時の日産の経営陣が販売台数800万台のメーカーにしようと拡大戦略を掲げ、それを目がけて工場への投資、人員に対する支出を増やしてきた。

しかし、日産の過去最高の販売台数は2017年度の577万台で、それ以上にはならなかった。近年は350万台に届かず推移している。今の厳しい競争環境の中では、この実情を客観視する必要がある。

――競争環境がより厳しくなった、と。

例えば2年ほど前から中国市場での競争は熾烈を極めてきた。そして今、私たちは中国の自動車メーカーが積極的に外に出ているのを目の当たりにしている。さらに、足元では関税を筆頭に1週間単位で地政学的な緊張感が高まっている。市場には相当のプレッシャーがかかっており、台数の成長は難しい。

過去数年間、日産はなんとか台数を増やして、この大きなコスト構造をまかなおうと集中的に取り組んできた。ただ残念なことに、難しいということがわかった。今の経営環境がとても厳しく、複雑だからだ。

私が今年4月にCEOに就任した際に、まず従来の経営計画を見た。そこでわかったのがコスト構造のリストラが十分ではないということだ。より早く、より深く構造改革を行わなければいけない。台数頼みはやめた。

日産が唯一、業績を改善するすべは、残念なことにこの構造を見直すしかない。そのため、5月に発表した経営再建計画「Re:Nissan」はコスト構造の改革に集中している。10年前にできた抜本的な問題に対処することこそが「Re:Nissan」の目的だ。

2025年度に北米、欧州、日本で発売を予定する新型「リーフ」(写真:日産自動車)

――2万人の人員削減と国内外の7つの工場を閉鎖する計画です。国内では追浜工場や子会社の湘南工場を閉鎖するという報道が出て地域経済から反発の声も上がっています。早期に実行できますか。

「Re:Nissan」の計画はたしかに野心的だ。痛みを伴うし、どんなリーダーでもやりたいものでは決してないだろう。だが、日産を将来に向けて残すためには、やるべきだし、やるしかない。

繰り返しになるが、これは痛みを伴う活動だ。多くのステークホルダーが絡んでいるため、かなり丁寧に行っていく必要がある。従業員の生活やその家族、地域社会、さらに取引先も影響を受ける。政府や、自治体も懸念をすでに表明している。

だが残念なことに、日産が長期的に生き残るためにはやるしかない。私がそれを無視するのは無責任だと考えている。現実を直視し門構えを見直さなければ、より多く、大部分の雇用を守ることはできない。

本記事の詳報版は、東洋経済オンライン有料版記事「〈詳報記事〉日産エスピノーサ社長「日産を残すには7工場閉鎖をやるしかない」/台数頼みはやめた/18カ月で再建した後パートナーを探す」でご覧いただけます。
秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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